「もちもち、フワフワ、あたたかい」子どもの心を育てる親子のパン作り
2020年04月17日
近年は全国で親子パン教室が開催されています。BBQやキャンプ、潮干狩りなどのアウトドアな体験と比べ、身近で手軽、天候に左右されないなどといった、親にとっても嬉しい要素が多いことは確かです。しかし何故こんなにも、親子パン教室が人気なのでしょうか。
その背景には「食育」ブームだけでなく、子どもの情操教育や、知的好奇心を掻き立てる要素が盛り込まれていることが挙げられます。
絵本でもパンが登場するシーンは多く、食品としての魅力はケーキやお菓子に勝るとも劣りません。もちもちとした生地は触れてみたいと思わせ、フワフワと膨らむ様子は目に見えて面白い。加えて、パンの焼ける良い匂いや温かさは、幸せなイメージを連想させてくれます。
パン作りは、子どもに動機付けの必要がない、優れた発達教育と言えるのです。
「自分でパンを作って食べる、子どもはきっと好きだろうなあ」といった漠然としたイメージは、誰もが持つものです。
では具体的に、パン作りが子どもの発達課程において、どのような影響を与えるのか、そしてその際にプラスαで行える教育プログラムはどういったものがあるかを挙げていきましょう。
指先を使ってパンを捏ねることは、集中力を養い、右脳のトレーニングにもなります。また焼き上がりを想像してパンを成形することは、思考力を高めます。
絵本と同じパンを作る、絵本に出てくるキャラクターを模したパンを作る、これは多くの親子パン教室でも取り入れられているプログラムです。絵本のあたたかいイメージをそのまま現実世界に持ち込むことが出来、子どもの心を豊かに育てます。
パンを思うように成形出来るようになってきたら、今度は衛生面に注意を向けてみましょう。小学校低学年ともなれば、自分の健康を自分で守る方法を学ぶに良い年齢です。
手のひらに竹炭パウダーや食紅を少し着け、そのままパンを捏ねて貰います。あっという間に白い パンはグレーやピンク色に染まり、もしこれが体に悪いものだったら…と想像させると、手洗いの大切さ、清潔を維持することの大切さを学ぶことが出来ます。同様に、ココナッツオイルやニンニクを擦り付けた手でもパンを作らせ、そして焼き上がりを食べ比べて貰います。目に見えなくとも、手に付いた状態で食品を触ると、影響が出るということを実感出来ます。
小学校中学年ともなれば、目に見えない「何か」に現実味を感じてきます。魔法の力だったものが、微生物や電力、熱といった科学的な発想に転換される時期です。放っておくと何故か膨らむパン生地は、イースト菌という微生物の力によるものだとも説いて聞かせれば理解します。その際にはイースト菌を可愛くキャラクター化するなど、さらに興味を引く工夫も必要ですが、ここで科学的な知識に触れておくと、今後理系の学習に苦手意識を感じることなく、大きなアドバンテージとなるでしょう。
上述した内容は子どもの学習に重点を置いたものですが、全国の親子パン教室に組み込まれているプログラムは様々です。
例えば、全国で教室を開催し、フランチャイズ化している「親子パン教室Peek a boo!」では発酵時間に作るパンにちなんだ絵本の読み聞かせをするプログラム。
出張でのクラスも受け持つ「料理教室noshu」では、パン生地だけでなく、子どもにとって馴染み深い、色紙や指スタンプでの季節の工作も折り込んだプログラム。
ホームメイドクッキング大宮校では、材料の説明など、座学が含まれるプログラムが行われました。
また、アレルギー対応のクラスや、療育を目的としたクラスを持つ教室も見られ、親子パン教室は実に多岐に渡ります。
親子パン教室が地域に基づき、各地で開催される理由は他にもあります。
パン作りには間に発酵、ベンチタイムなど待機時間があり、その時間に各々子どもとの時間や、参加者同士の交流を行いやすいのです。開催されている教室の多くが、その発酵を待つ時間にママ友交流、子ども同士の交流、お互いの子どもをお互いが見合うといった、子育て支援要素を練り込んでいます。
パン教室が地域で頻繁に開催されていても、予定を合わせて参加することが難しい、また仕事での付き合いに加えてこれ以上交友関係を広げたくない…といった忙しいママも多いのが現実です。それでも子どもとの思い出作りや、情操教育は大切で、忙しいママこそジレンマを抱えています。
そこでお勧めするのが、家庭で行うママパン教室です。
オーバーナイト法などでの事前の仕込みや、ホームベーカリーは必要ですが、それで一次発酵まで行ってしまえば、あとは子どもと一緒に成形をし、焼くだけです。子どもが最も喜び学べる、モチモチとパンを捏ね、形作る作業だけ楽しむことが出来ます。ホームベーカリーを使えば、面倒で散らかりがちな粉からの捏ね作業を短縮でき、自宅でも容易に行えます。子どもの様子を見て、粉から捏ね、発酵させるといった過程を増やし、成長に合わせた教育プログラムを自分で組むことも可能です。
パン教室が一回の参加につき、親子で5000円前後かかることを考えると、安いもので1万円から購入出来るホームベーカリーはお値打ちかもしれません。
近年は、「情操教育」「発達心理学」といった言葉よりも頻繁に、「食育」という言葉を多く耳にします。ここまで来ると最早ブームの域を超えている、「食育」。しかし、この言葉を重たく、鬱陶しく感じる親も多いのではないでしょうか。
好き嫌いなく何でも食べる食卓はみんなで囲む、箸をキチンと持てる、正しい食材を選べる…難なく出来る子どももいれば、それが難しい子どももいます。あくまで理想であって、それが出来たからと言って子どもの人格とは別です。
ここで原点に返ってみましょう。
「美味しそう!」「どうやって作るの?」「美味しいね」食育の基本はこれだけで十分です。
そして、パン作りはその中でも最も効率良く自然に、子どもの知的好奇心を引き出し、成長を促すことが出来る体験の一つだと言えるのです。
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