障がいが、私たちの社会を試している レッツ!インクルーシブ!vol.2
2019年05月08日
生き方がどんどん多様化する今。
全ての人が認めあい、受け入れあう「インクルーシブ」は地球規模のテーマです。
このコーナーでは、社会福祉士ライター・西村亮子が、親子で今すぐ実践できる「インクルーシブ」をご提案。
みんなが個性を認めあえたら、世界はもっと楽しくなる。
親子で『レッツ!インクルーシブ!』
今回は、親としての気持ちにスポットを当ててお話を伺いました。
お答えくださったのは、vol.1に引き続き、今春特別支援学校高等部に入学するコウキ君のママ、江本美代子さん(48)です。
(西村)高校入学という節目ですが、これまでを振り返られるとどんなことが思い出されますか。
幸い私の周りは理解のある方が多かった。それに尽きます。
「障がいのこと、わざわざ言わなくていいよ」とか「でも、言わないで、隠してると誤解されるのも嫌だよね」と、私の気持ちを代弁するように察してくれる友人に恵まれたことは、本当に感謝しかありません。
エピソードを一つお話ししますね。
産後、コウキの障がいを知って、出生前診断を受けなかった私を批判した人は少なからずいたんです。落ち込みました。でもね、その後に妊娠した友人から「診断は受けない。どんな子でも受け入れる。美代子さんの気持ちが分かるから、そう決めた」と打ち明けられ、理解してくれる人の存在に私が勇気づけられた。診断を受けるか否か、その結果をどうみるかは、それぞれの価値観によるもので、私はどちらも否定しません。でも、私自身は、コウキがいたからこそ、いろんな価値観があることを学び、それを受け入れられる自分になっていったように思います。私の所に産まれてきてくれたことに、感謝しています。
(西村)コウキ君の存在が、江本さんや周囲の人を、変えていったんですね。その輪は、社会へも広がっているのでしょうか。
コウキはダウン症なので、顔が特徴的。見知らぬ人から好奇の目で見られたり、「大変ね」と声をかけられることもあります。確かに大変だけど、障がいがあるというだけで、そこばかりに目を向けられると少し辛いです。人にはそれぞれ才能がある。コウキの力、コウキのできることにもっと注目していただけたらと思います。
先も申し上げた通り(vol.1参照)、すべての人は個性があって、ひとくくりに「障がい者だからこうだ」なんて言えない。一人一人と接してみてください。できること、できないこと、得意や不得意は、障がいの有無とは関係なく誰しもあるものではないでしょうか。
コウキは障がいがあるということを通して、私たちの社会を試しているよう感じます。
本音を申し上げますと、進学の選択肢は狭いと感じざるを得ませんし、コウキの社会参加を後ろめたく感じさせるほど、壁を感じました。でも、だからこそ、互いを知るために、もっともっと多様な接点がこの社会にあっていい。知ることで、無用な誤解も避けることができるはずです。みんなの個性が輝く寛容で温かい社会は、すべての人の望みなのではないでしょうか。
取材を終えて
障がいのある方と接するとき戸惑うのは「どう関わっていいか分からない」からではないでしょうか。そこにはきっと「傷つけてしまったらどうしよう」という優しい心が隠れているはず。戸惑いを乗り越えるためには、江本さんのおっしゃる通り「まず知ること」が一番。一人ひとり違うからこそ、互いを知る機会をもっともっと作れたらいいな、と思いました。
<お話を伺ったのは>
江本美代子さん
長男・コウキくんがダウン症であったことをきっかけに、障がい児の教育について学び始める。美術教員の経験を活かし障がい児向け造形教室など主宰。幼少期からのダイバーシティ(多様性)経験の重要性を訴えている。
Facebook:https://www.facebook.com/miyoko.emoto.1
タグ: ダウン症, 親子, 障がい, 障がい児, 子どもの教育