「音楽の得意な子は指示が一回で通る?」

世の中、様々な音が溢れています。朝目覚ましの音で起きてから、部屋の電気を消して就寝するまで、何も耳にしない1日は無いと言っても過言ではありません。
音楽とは、そういった日常に転がる音を、心地の良いリズムやハーモニーに乗せて楽しむもの。好きな人は非常に好きだし、苦手な人は歌うのも弾くのも腰が引ける…なんて思っているかもしれません。あなたは、どうでしょうか。「音楽を聴くのは好き」「歌うのが大好きで、お風呂で口ずさむのが気持ちいい」「最近忙しくて音楽を聴いてない」…私たちに身近な「音楽」と「話を聞くこと」、一見なんの繋がりも無いように思えるこの2つですが、実は面白い関係性があります。

 

1. 子どもはみんな歌うのが好きなのか。

保育園や幼稚園等、子どもが過ごす施設を思い出して欲しいのです。自分の子ども時代、あなたのお子様の通っていた場所、あるいは近所にある施設…思いつく場所にいる子どもは、みんな歌をよく歌っているイメージがあるのではないでしょうか。私は保育士の経験がありますが、まず朝一番に「朝の会」で童謡を2、3曲とおはようの歌、その後活動が進んでいくにつれ、手遊び歌、ダンス、いただきますの歌、そして帰りの歌。日によっては、CDの付いている絵本を見ながら歌うこともあります。そんな中、歌に全く興味を示さない子もいます。歌より絵本や運動がやりたい、みんなと同じ事をしたくない、等理由は様々ですが、(俗に言う“イヤイヤ期”真っ只中の子は、理由なく歌わない事も。)彼らが嫌がるのには「歌を一曲集中して聴くのが苦痛」という共通の特徴があるように感じます。ある程度会話ができるようになる5歳児クラスともなろうものなら、さらに「上手に歌えないから」「楽しくないから」といった理由が乗ってきます。
そう、保育園や幼稚園で「音楽が楽しくない!」と感じて主張する子どもは「一つのことを集中して、最初から最後まで聴く」ことに抵抗を感じているのです。つまりは、「音楽が好きな子は最後まで集中して聴ける」のではなく、「最後まで集中して聴くのが得意な子は音楽が得意」とも言えるでしょう。

 

2.「大事なことだから一回で聞いてね」

子どもに対して話す時に「大事な事だから、一回で聞いてね。」と言って、実際に一回で理解できる子とできない子。この2パターンの違いは、先ほど説明した「一つのことを集中して最初から最後まで聴く」ができるかできないか、とも言えます。例えばあなたが、「トイレに行って、手を洗ってからおやつを食べてね」と子どもに伝えるとします。大人であれば、この短い文の内容はすぐに理解できますが、子どもはそうもいかないのです。この文は、①トイレに行く、②手を洗う、③おやつを食べる、の3つのやるべきことを一文で伝えている文章です。集中して聴くことができると、①〜③のやるべきことと、順番を理解することが出来ますが、集中して聞いておらず、どこか聞き逃していると、やるべき事も、順番もわからなくなってしまいます。そのため、結果的に子どもに「もう、一回で聞いてって言ったじゃない…」と不満に思いながら、お母さんがもう一度伝える…ということが起きるのです。

 

3.集中して最後まで聴けるようになるには
これまで、「集中して聴ける子が話の理解度が高い」という事を説明してきました。では集中して聴く子に育てるにはどのようにすれば良いのでしょうか。答えは簡単です。「親が子どもの話を集中して聴く」だけです。
親の姿を子どもは真似します。さらに言うと「してもらって嬉しかったこと、満たされたと感じること」は、高確率で真似をします。話を最初から最後まで目を見て相槌を打ちながら、時には言葉を投げかけながら、受け止める。自分の話をこのように聞いてもらったら、嬉しいのではないでしょうか。一生懸命に自分の持っている言葉で、日々の経験したことや気持ちを伝えようとする子どもなら、尚更です。例え時間がなくても、興味が無くても、子どもの話に耳を傾けて最後まで聴く事こそが、「よく話を聞き、理解する子」を育てる最大のポイントです。

しかし、日々家事に仕事に忙しい…目が回るような忙しい時に子どもの話を真面目に聞くなんてできない…という人もいるのではないでしょうか。そんな時は、「あとできちんと聞くから、今は待っていてね」「今忙しいの、これが終わったらお話聞くね」等、子どもの聞いてほしいという気持ちを受け止めつつ、こちらの都合も同時に伝えると良いと思います。「あとで聞いてもらえる」という安心感から、子どもとの信頼関係もさらに深くなり、「待つこと」も学ぶことができます。

子どもは自分の経験から学習をし、人との関わり方を学びます。その中で、親の子どもに対する態度や関わり方は、育ちに大きく関わってくるのです。
子どもの目を見つめ、その話最後まで耳と心を傾ける。それこそが、話を理解する子を育てる重要なポイントです。ぜひ、一生懸命キラキラした目で話をする姿を、大人のあなたも同じようなキラキラした目で見つめて、話を「聴いて」みてください。新しい発見や、その子の成長した姿を見つけられるかもしれません。


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ミラ窓編集部

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ミラ窓編集部のメンバーである編集者、ライターのママ達が担当させて頂いてます。