「ちょっと待ってあげようね」 レッツ!インクルーシブ!vol.1

インクルーシブ

 

生き方がどんどん多様化する今。

全ての人が認めあい、受け入れあう「インクルーシブ」は地球規模のテーマです。

このコーナーでは、社会福祉士ライター西村亮子が、親子で今すぐ実践できる「インクルーシブ」をご提案。

みんなが個性を認めあえたら、世界はもっと楽しくなる。親子で『レッツ!インクルーシブ!』

 

より具体的なお話を聞きたい私は、障がいのあるお子さんのママを個別にインタビューさせていただきます。

トップバッターは今春、特別支援学校高等部に入学するコウキ君のママ、江本美代子さん(48)。

 

(西村)中学校ご卒業、おめでとうございます。節目の春ですね。公立小中学校の支援学級に通われたコウキ君の存在は、普通学級のお子さんにも貴重な経験をもたらしたのではないでしょうか。

 

ありがとうございます。たくさんの方に支えられ、無事このときを迎えることができました。

学校ではご迷惑をおかけすることもあったでしょうけれど、コウキとの接点が子どもたちの経験値になったならば、これほど嬉しいことはありません。私自身も、コウキがいたから、より多様な価値観を受け入れられる自分になった。コウキは、障がいがあるということを通して私たちにいろんなことを教えてくれているようにも感じます。

 

(西村)コウキくんは、与えるものをたくさん持っていらっしゃるんですね。一方で、障がいがあるがゆえに困った体験も、おありになりましたか。

 

それもたくさん(笑)

コウキは「場面が変わる」ことに対応しづらいんです。具体的には、家の出入りや車の乗り降り。今はスムーズになりましたが、小学生の頃は一度スイッチが入ると、うつむいて首を横に振り、体の力が抜けて動かなくなってしまって。小さい頃は抱えて外出もしていましたが、小3くらいになると物理的に難しい。男の子で体重もありましたし。

 

(西村)例えばですが、同じような場面に、私が子どもと一緒に遭遇したとします。コウキ君の場合は「首を振る」動作でしたが、これがレストランなどでテーブルを叩く、大声を出す、といった行動の場合もあります。私なら子どもに「ああして落ち着こうとしているところだよ」と言うと思います。もしその声が聞こえたら、江本さんは気分を害されませんか?

 

良い声掛けだと思います。実際そうして落ち着こうとしている場合が多いですし。現場を見るのが一番理解いただけますよね。お子さんにぜひ説明してあげてください。

もし言葉を足すとすれば「ちょっと待ってあげようね」かな。コウキもそうですが、同年代のお子さんよりは少し長めに待っていただくと、うまくいくことが多い気がします。

それを周りの方が分かってくれたら、コウキも私も、とても心強い。「見ちゃダメ」という言葉が聞こえるよりずっと嬉しいです。

 

(西村)障がいの有無に関わらず、「待つ」は子育ての基本ですね。

 

そうなんです!「障がい者」とひとくくりにされがちだけど、性格はそれぞれ。支援さえあればごく普通の子どもです。おとなしい子も、活発な子もいる。みんな個性的ですよ。

コウキにも、純真なところと、歯がゆくなるようなやんちゃな部分が両方あります。「天使みたいね」と優しく声をかけていただくこともありますが、決してそんなところばかりではない(笑)。

だからこそ、親としては、障がいも含めたその個性がまるごと受け入れられることを願ってやみません。「少し多めの理解と支援が必要なだけなんだな」という気持ちで、構えることなくコウキと接していただければ幸いです。

 

 

<お話を伺ったのは>

江本美代子江本美代子さん

長男・コウキくんがダウン症であったことをきっかけに、障がい児の教育について学び始める。美術教員の経験を活かし障がい児向け造形教室など主宰。幼少期からのダイバーシティ(多様性)経験の重要性を訴えている。

Facebook:https://www.facebook.com/miyoko.emoto.1

 


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西村 亮子

社会福祉士ライター

西村 亮子

日刊誌の記者を経てフリーライターに。記者時代に福祉分野を長く担当し、その縁で退職後は介護保険事業所に勤務。現場を知り、閉鎖的になりがちな福祉の意義を広く発信する必要性を痛感する。社会福祉士。2児の母。